燃料・化学品研究

残油処理技術の開発

残油

残油は中東などから輸入した原油を蒸留し、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油などに分けた際の最も重質な留分です。一般的には、残油を希釈して発電や船舶用の燃料や、道路舗装用アスファルトの原料として使用されています。ただし、硫黄や金属といった不純物を多く含むため、使用に際してはこれらの不純物を除去し、環境にやさしい製品に変換する必要があります。

残油の不純物除去

残油には常圧蒸留装置で生成される常圧残油(AR)と減圧蒸留装置で生成される減圧残油(VR)の2種類が存在します。限りある資源である石油を残すことなく大切に使い、安価でかつ安定した燃料供給のためには、この両残油を使いこなしていく必要があります。しかし、VRは残油中の硫黄や金属をより多く含んでいるため、これらの除去に向けては前処理が必要です。当社はこの前処理を行う溶剤脱れき(SDA)装置(図1)を国内で唯一導入しています。前処理を行った脱れき油(DAO)とARを混合し、残油脱硫(RDS)装置で不純物の除去を行っています(図2)。

図1 溶剤脱れき装置
図2 石油精製工程における残油処理フロー

残油脱硫装置の安定操業のためのシミュレーション技術

図3 反応塔内の差圧予測結果例

ARと性状が大きく異なっているDAOをRDS装置で処理するためには、高性能な脱硫触媒の使用はもちろん、高精度の予測技術が必要です。当社では、長年のRDS装置の運転経験を活かし、新たな予測シミュレーターを開発しました。
一つ目は触媒寿命予測シミュレーターです。残油中には無数の分子が存在しており、反応は非常に複雑であるため、反応予測には高性能のシミュレーターが必要となります。RDS装置では複数の触媒を積層充填し、硫黄、金属などの不純物を除去しています。触媒寿命予測シミュレーターではこれらの触媒ごとの反応を計算し、触媒の反応及び活性劣化を予測しています。反応性が異なるARとDAOの双方処理時にも使用できる機能を新たに開発してシミュレーターに実装しています。
もう一つは差圧予測シミュレーターであり、これにより反応塔内の差圧を予測しています。一般的に反応塔の入口と出口の間の圧力差(差圧)が一定以上に上がってしまうと、装置破損を予防するために運転停止しなければなりません。ARとDAOのように性質の異なる油種を混合する場合、溶解性の違いから沈殿物が多く生成し、反応塔内の差圧が上昇しやすくなります。差圧予測シミュレーターの適用により、これらの現象を正確に把握できるようになりました(図3)。

我が国は原油をほぼ全量輸入しています。今後は、現在処理できないような劣質な原油であっても使いこなす技術が望まれます。そのため、重質留分に多く含まれる硫黄や金属のような不純物を除去できるRDS装置の役割はますます重要になってきます。シミュレーション技術により、日々の運転管理に活用して安定操業に役立てるとともに、我が国のエネルギーセキュリティにも貢献していきます。

以上

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