INTERVIEW

社員インタビュー

超高速汎用原子レベルシミュレータで、
触媒の新規材料探索に挑む。
究極の目標はコンピュータ上で
現実世界を完全再現。

研究開発職

Y.Y.

  • 中央技術研究所 デジタル研究所 MI技術グループ
  • システム生命科学府システム生命科学専攻修了
  • 経験者採用2020年入社
2020年5月~
2022年3月

中央技術研究所先進技術研究所データサイエンスグループ

2022年4月~
現在

中央技術研究所デジタル研究所MI技術グループ超高速汎用原子レベルシミュレータを駆使して、触媒の新規材料を探索。カーボンニュートラル社会実現への貢献を目指す。

前職の仕事内容とENEOSへ転職を決めた理由を教えてください。

前職では、プラスチック製品の製造プロセスに関するデータ解析などを担当していました。その業務の一環として他社動向を調べていた時、たまたま目にしたのがENEOS中央技術研究所のサイトでした。ENEOSでは機械学習、ディープラーニング、分子シミュレーション、画像解析、流体シミュレーションと幅広いデジタル分野の研究を行っていることを知りました。前職の業務には満足していましたが、ENEOSの研究環境やテーマに衝撃を受け、ここでならよりコンピュータサイエンスに関する専門性を高められるのではないかという思いが日ごとに強くなったのです。ちょうど長男が幼稚園入園前だったことも転職を後押しした理由のひとつです。

所属部署の役割とご自身の仕事内容を教えてください。

入社後は中央技術研究所のデータサイエンスグループに配属され、当時PFN社と共同開発中だったMatlantisを用いた触媒分野の分子シミュレーションを行うことになりました。前職同様に製造工程のデータの解析などを担当すると思っていたので、これまでとは分野の異なる業務に最初は戸惑いました。しかしながらグループ内の分子シミュレーションを専門としている方々から計算方法などを教えてもらうことで、少しずつ理解を深め、入社3年目に、データサイエンスグループから独立したMI技術グループに配属になりました。

Matlantisは新規材料開発にどのように活用されているのでしょうか。

Matlantisは従来の原子レベルシミュレータに深層学習モデルを組み込むことで、原子スケールで材料の挙動を再現し、大規模な材料探索を行える汎用原子レベルシミュレータです。これまで数時間~数カ月かかった原子レベルのシミュレーションを、わずか数秒~数分単位で行うことができ、新規材料開発に欠かせないツールとなっています。ただし触媒表面の現象である分子の吸着や反応の計算に必要なプログラムが不足していたため、触媒分野へ適用可能な手法の技術開発を進めました。この技術開発を通して、触媒反応に対する理解が深まり、今ではMatlantisを用いて触媒の特性をある程度予測できるようになりました。
また、触媒反応の計算手法に対する理解を深めてからは、コンピュータ内でさまざまな材料の分子シミュレーションを行う、バーチャルスクリーニングにも挑戦しています。もちろん、分子シミュレーションだけで現実世界の実験を全て再現できるわけではありませんので、私がMatlantisで探索、提案した新規材料は、実験グループで実際に合成してもらい、性能評価まで進めます。現在、有望そうな触媒が見つかりつつあり、近い将来の実用に向けて検証を重ねているところです。

触媒開発はカーボンニュートラルの実現にも重要な役割を果たすと聞いています。

はい。化学・エネルギー業界において、触媒は重要な役割を果たします。現在、もっとも大きな社会テーマのひとつにカーボンニュートラルの実現がありますが、ENEOSでも水素と二酸化炭素から、効果的に合成燃料を作るための研究開発に挑戦しています。MI技術グループにおいても、カーボンニュートラルに関連する触媒の計算を進めています。実験グループと必要な触媒性能に関する打ち合わせを行った後、私がMatlantisで複数の材料をシミュレーションし、有望な材料を提案。その後、実験グループが実際の材料で検証を行うという流れです。

ENEOSの触媒開発の具体的にどのように進化しているのですか。

私自身がもともと触媒の“専門家”ではないこともあり、提案する材料には時折「えっ、こんなものが!?」という意外なものも含まれます。これまでの開発ではあまりに時間がかかりすぎて、一見有望には見えない材料にまでは及ばなかった探索が、高速シミュレータなら網羅できるようになっているのです。実際、従来の触媒開発では考えられなかった材料が有望だと検証される事例もでてきておりENEOSの触媒開発は、そのスピードにおいても探索範囲においても大きく進化しつつあります。
また、これらの様々な計算結果はMatlantisの新たな学習材料としてフィードバックされ、Matlantisの精度向上に役立てられます。この頼もしいツールを十全に活用することで、より効果的な触媒を開発し、カーボンニュートラル社会に貢献することこそが、現在、私たちが実現すべき足下の目標です。

転職して感じたENEOSの特色や強みがあれば教えてください。

同じ部署には私と同様に経験者採用としてENEOSへ来た方が多く、さまざまな分野のコンピュータサイエンス関する専門家がいる点も魅力です。PFN社との共同研究も最先端のAI技術に触れることができ、モチベーションの向上につながっています。AI・MIの分野は進展が非常に早く、常に新しい技術を取り入れていく必要があります。私も最新の技術についていけるようにいつも技術情報のアップデートをするように心がけています。最終的にはコンピュータの中で現実世界の現象を完全再現したい。それが私の究極の目標です。