NEWS & TOPICS

汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」を活用した研究成果がJACS Auに掲載(2023年3月)

早稲田大学先進理工学研究科(関根研究室)、慶應義塾大学理工学部、ENEOS株式会社、富士通株式会社は、次世代コンピューティングの一つである量子インスパイアード技術※1を用いた取り組みとして世界で初めて、固体表面への分子吸着を予測することに成功しました。本手法の検証には、高精度、汎用性、高速性という特徴を持つ原子レベルシミュレータMatlantis™が活用されています。これらの成果は本年3月27日発行の国際学会誌JACS Auに当社社員も連名で掲載されました。
“Quantum Annealing Boosts Prediction of Multimolecular Adsorption on Solid Surfaces Avoiding Combinatorial Explosion“(DOI:10.1021/jacsau.3c00018)

分子の固体表面への吸着現象は、触媒反応など多様な分野において発生する重要な過程です。このような原子レベルの現象は理論計算により予測することが可能です。しかし理論計算では、吸着分子の数が増えると組合せ爆発が起こり膨大な計算時間がかかるため、これまでは主に少ない分子のみ扱われてきました。

今回、量子インスパイアード技術を用いて、組み合わせ爆発を起こさずに吸着配位を高速に探索する新しい方法を開発しました(図1)。本手法では、特に表面に多くの分子が吸着している高被覆率の領域において、従来法よりもはるかに高速に、安定な分子配置を発見できることがわかりました。

図1. 提案手法 量子インスパイアード技術を活用した高速多分子吸着予測手法

当社では、今後もマテリアルズ・インフォマティクス(MI)、シミュレーション技術などのデジタル技術活用を通して、脱炭素・循環型社会の実現や革新的素材の創出に貢献していきます。

  1. ※1量子インスパイアード技術
    量子現象に着想を得たコンピューティング技術で、現在の汎用コンピュータでは解くことが難しい「組合せ最適化問題」を高速で解く技術。計算には富士通株式会社の量子インスパイアード技術「Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer(「デジタルアニーラ」)」を活用した。

関連資料