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このページは、目次の中の第1編の中の第4章の中の第2節 石油化学のページです。

  1. 石油化学工業の発展
  2. 世界の石油化学製品の需給

1. 石油化学工業の発展

「石油化学工業」は、「化学工業」と「石油産業」が歴史的に築いてきた基盤の上に成り立ち、発展してきた工業である。「石油化学工業」はその名の通り、石油や天然ガスを原料としており、その製品は、合成樹脂や合成繊維、合成ゴム、合成洗剤等であり、用途は多岐にわたり、いずれも現代の産業や生活に不可欠なものばかりである。

当初、天然素材の代替品としてスタートした石油化学製品は、安価で豊富な石油や天然ガスを原料として、品質・性能等が均一な製品を多量に生産できることから、広く使用されるようになった。

絶え間ない技術の進歩により、天然素材では得られない性能を持った石油化学製品が、数多く開発され、商品化されている。

「化学工業」には、19世紀末から20世紀初頭にかけて成立した、アンモニア合成に代表される多量に電力を消費する「電気化学工業」や、合成染料や各種医薬品を生産した「石炭化学工業」がある。特にアンモニア合成は、巨大な装置産業としての近代化学工業の技術を総合的に集約したものであり、今日の「石油化学工業」の技術的な基盤となっている。

また、1920年代から本格化した高分子化学研究の進展により、主として石炭から生産されるアセチレンや芳香族を原料にした合成樹脂、合成繊維および合成ゴムの生産が工業化された。第二次世界大戦中には、ドイツ、米国において大量生産体制も確立している。しかし、当時はこれらの製品の内、石油を原料としたものはごく一部であった。

「石油化学工業」発展の歴史は、「石油産業」におけるガソリンの製造法の発展と関係が深い。

20世紀初頭の自動車の普及に伴い、特に米国を中心にガソリン需要が増加し、1920年代から分解ガソリンの製造が進んだ。分解ガソリン製造時に副生する分解ガス中には、多量のエチレン、プロピレンなどのオレフィン類を含んでおり、分解ガソリン製造能力の大きいアメリカでは、合成化学原料として分解ガス成分の利用を始め、「石油化学工業」が誕生した。

このように、「石油化学工業」は当初、第二次大戦前に石油産業の副生物の利用を目的としたが、大戦後は石油または天然ガスそのものを原料として使用する現代の「石油化学工業」の形態に発展し、アメリカでは豊富な天然ガスに含まれるエタンの熱分解により、またヨーロッパや日本ではおもにナフサの熱分解によりエチレンが生産されるようになった。ナフサ分解では、主生産物のエチレンのほか、プロピレン、ブチレン、ブタジエンなどのオレフィン類やベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)などの芳香族が同時に生産される。

また、戦後の自動車エンジンの性能向上により、接触改質法による高オクタン価改質ガソリンの製造法が発達し、この製造法が化学工業原料としてのBTXの生産に応用されるようになった。

以上のように、「石油化学工業」は、「石油産業」から種々の安価な原料の供給を受けながら、基礎化学品(オレフィン類や芳香族類)の生産技術を習得し、「化学工業」からは、基礎化学品を原料とする、合成樹脂、合成繊維、合成ゴム等の生産技術を受け入れることで、現在の隆盛の礎を築いたといえる。

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2. 世界の石油化学製品の需給注1)

石油化学製品の需要に関しては、引き続きアジアが世界の総需要の4割を超えて着実に増加傾向を続け2018年には5割に届く見込みであり、同市場の動向が世界全体に与える影響が北中南米に加え、大きくなっている。また、生産に関しては、当初の見通しから多少の遅れはあるものの、引き続き中東、インドにおける投資拡大、中国の新増設、北米におけるシェールガス原料関連の石化プラントの新増設を中心に、新増設計画が進展・具体化する。基本的には、世界全体として供給超過の状況であり、長期的には供給超過幅が拡大に向かう見通しであるが、今後の世界経済の動向やプラント増設の進捗によって状況が変わり得る点について充分な留意が必要である。

世界のエチレン系誘導品の需給については、引き続きアジアが需要の伸びを牽引する見通しの中で、各国・地域ごとの需要見通しを積み上げると、2023年末の世界全体の需要量の合計は182.5百万トン(2017年比で32.8百万トン増)、2017年から2023年の需要の伸び率は年平均3.4%となる見通しである。アジア地域が中国(年平均5.0%)、ASEAN(年平均4.7%)によって、年平均4.2%へとなる見通しである。欧州、北中南米、中東については、前年に比べ横ばいあるいは微少な増加傾向を示す見通しとなった。

世界のエチレン系誘導品の生産能力は、2017 年末時点で178.2 百万トン、2023 年までに稼働する可能性の高い生産能力新増設計画に基づくと、同年末の生産能力は222.8 百万トン(2017 年比で44.6 百万トン増)、年平均3.8%で増加する見通しである。特に中国では年率8.9%、韓国では年率6.6%、ASEANでは年率4.3%と、高い能力増加が見込まれる。北米で計画されたシェール由来原料の石化プラントの新増設事業が進み、2017 年時点で北中南米のエチレン系誘導品の生産能力は世界全体の25%を占める。2023年では、第13次5ヵ年計画により、中国の能力シェアが大幅に上昇し世界全体の22%を占めるようになる見通しである。

世界のプロピレン系誘導品の需要については、エチレン系誘導品と同様にアジアが需要の伸びを牽引する見通しである。プロピレン系誘導品の世界の需要は、2017 年の98.7 百万トンから2023 年には120.0 百万トンに増加し、年平均伸び率は3.3%と見込まれる。

地域別の需要の伸びは、アジアが年平均4.1%、欧州が1.2%、北中南米が1.6%、中東が5.5%、CIS が6.0%、アフリカが5.4%と増加する見通しである。

生産能力は、需要の伸びに応じて年平均3.9%で着実に増加する見通しで、2017 年から2023 年における、地域ごとの年平均伸び率は、アジアが5.5%、北中南米が1.8%、中東が2.6%である。

世界の芳香族(ベンゼン、トルエン、キシレン)の需給について、需要は中国を中心に増加が見込まれ需要超過幅が拡大する見通しである。また、シェール開発等原料軽質化が進むと想定され、特に北米での需要超過傾向が強くなると見込まれる。2017年から2023 年における需要の年平均伸び率の見通しは、ベンゼン2.8%、トルエン3.5%、キシレン5.7%である。一方、生産量の年平均伸び率の見通しは、それぞれ3.0%、2.8%、5.3%となっている。

世界のPTA(テレフタル酸)生産量、需要は、その半分以上を中国が占める構造で、年々この割合が拡大しているが、その原料であるパラキシレンでは、中国は大幅な需要超過で2017年には10百万トンを超え14.4百万トンとなった。PTAの需要超過は2016年に一段落したものの、パラキシレン生産能力の新展開が、強い需要増加に対し相対的に乏しく、中国での2023年のパラキシレン需要超過幅は、2017年より減少はしても13.5百万トンと依然として10百万トンを超える見込み。2017年から2023 年における需要の年平均伸び率の見通しは、パラキシレンが5.1%、PTA が4.5%と引き続き高い水準が予想されるが、生産量はそれぞれ5.8%、4.9%と需要の伸びと同一水準あるいは上回り、需要超過から供給超過に変わる見通しである。

世界の石油化学製品の需給の詳細は、以下を参照いただきたい。

参考:世界の石油化学製品の今後の需給動向

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[注]
注1)従来から、世界の石油化学製品の需給については、経済産業省により、毎年更新、発行されている「世界の石油化学製品の今後の需給動向」のデータに基づいて記載しているが、2020年度版の発行が見送られたため、以下記載の需要量、生産量、年平均伸び率等は、昨年度2019年版のデータに基づいたものとなっている。

[参考文献]
1)「石油化学の実際知識」 平川芳彦 1968年3月 東洋経済新報社
2)「化学工業史」 高橋武雄 1973 産業図書
3)「Petroleum Refinery Engineering (Fourth Edition)」 W.L. Nelson
1958 by McGraw-Hill Book Company
4)「日本大百科全書」 原 伸宜 1994 小学館
5)「世界の石油化学製品の今後の需給動向」 経済産業省製造産業局素材産業課 2019年10月発表


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