Matlantis™を活用した耐酸化性予測に関する研究成果がJACS Auに掲載(2026年8月)

東京大学と当社は、汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」※1,2を活用し、耐酸化性の予測手法を開発しました。本成果は、米国化学会の国際学術誌「JACS Au」※3に掲載されました。
“Comprehensive Evaluation of Oxidation Resistance for Tertiary Phosphines Using Universal Machine Learning Interatomic Potential-Aided Molecular Dynamics Simulation” ※4
耐酸化性は、触媒や機能性材料の実用化に重要な性質です。第三級ホスフィンは、優れた活性や選択性を示す触媒の配位子として広く用いられる一方、空気中で酸化劣化しやすいものも多く、その耐酸化性は合成・保管・取り扱いに大きく影響します。耐酸化性の事前予測には、シミュレーション等の計算技術の適用が検討されてきましたが、従来の経験則や計算負荷が膨大な第一原理計算では対象分子が限られ、網羅的な評価は困難でした。
このような背景を踏まえ、2024年度東京大学プラクティススクール※5において、当社は同大学院化学システム工学専攻の学生と共同で、本課題の解決に取り組みました。学生を主体に、担当助教や当社社員と議論を重ね、数か月で耐酸化性の予測手法を構築するに至りました。
具体的には、第一原理計算に近い精度と高い計算効率を両立するMatlantisを用いて、ホスフィンが酸素により酸化される過程を分子動力学シミュレーションで解析しました。さらに、医療・疫学分野で有用とされる生存時間解析を活用し、酸化までの寿命に相当する指標(τ)を算出して耐酸化性を評価しました。一部のホスフィンでは、算出したτと実験結果の整合性も確認しました。
プラクティススクールの終了後、当社では計51種類のホスフィンに適用を拡大し、多様な構造に対する予測性能と化学的妥当性を検証しました。その結果、複数要因が関与し、特殊な骨格をもつ場合でも、化学的性質を適切に反映して予測できることを確認しました。また、高い汎用性を有するMatlantisを基盤とすることで、実験データのない未知のホスフィンへの適用可能性も示されました。

プラクティススクールを起点とした本成果を取りまとめ、前述のJACS Au誌での発表に至りました。 当社は大学と連携し、次世代を担う学生との協働研究や人材育成に取り組んでいます。今後も、AI・シミュレーション技術により研究開発を高度化し、持続可能な社会の実現に資する材料の創出と実課題の解決に貢献します。
- 関連資料
-
- ※1汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」
- ※2Takamoto, S.; Shinagawa, C.; Motoki, D.; Nakago, K.; Li, W.; Kurata, I.; Watanabe, T.; Yayama, Y.; Iriguchi, H.; Asano, Y.; Onodera, T.; Ishii, T.; Kudo, T.; Ono, H.; Sawada, R.; Ishitani, R.; Ong, M.; Yamaguchi, T.; Kataoka, T.; Hayashi, A.; Charoenphakdee, N.; Ibuka, T. Towards Universal Neural Network Potential for Material Discovery Applicable to Arbitrary Combination of 45 Elements. Nat. Commun. 2022, 13, 2991.https://doi.org/10.1038/s41467-022-30687-9.
- ※3JACS Au | ACS Publications
- ※4Sato, T.; Asai, Y.; Koshimizu, U.; Hakozaki, Y.; Takei, K.; Mori, K.; Yasumura, S.; Ikeda, T.; Yayama, Y. Comprehensive Evaluation of Oxidation Resistance for Tertiary Phosphines Using Universal Machine Learning Interatomic Potential-Aided Molecular Dynamics Simulation. JACS Au 2026.https://doi.org/10.1021/jacsau.6c00783.
- ※5東京大学プラクティススクール最終報告会を開催 | NEWS & TOPICS | ENEOS株式会社