ページの先頭です
ページ内移動用のメニューです。


このページは、目次の中の第2編の中の第2章の中の第1節 総説のページです。

  1. 潤滑油の概念
  2. 潤滑油用基油
  3. 潤滑油用添加剤

1. 潤滑油の概念

潤滑油はエンジン油に代表されるように、滑り合う二つの固体間の摩擦・摩耗を減少させるために用いられる油系液体潤滑剤の総称と定義されており、ほとんど全ての機械に使用されている。一般に潤滑油は石油系、非石油系に分類されるが、石油系潤滑油がほとんどを占めている(図 2-2-1-1)。

図 2-2-1-1 潤滑油の分類

また、潤滑油は使用個所、使用条件が多岐にわたっており、その種類は機械の種類と同様非常に多い。 表 2-2-1-1に経済産業省が毎月実施している石油製品需給動態統計調査における油種分類を示す。

表 2-2-1-1 石油製品需給動態統計調査における潤滑油の油種区分

2022年度の石油製品需給動態統計調査によると、表2-2-1-2に示すように、潤滑油は年間約217万kL販売されている。中でもガソリンエンジン油とディーゼルエンジン油の合計販売量は約58万kLと全体の約27%を占めている。

表 2-2-1-2 2022年度の潤滑油販売統計数量
区分 販売量 割合
ガソリンエンジン油 373,383 kL 17%
ディーゼルエンジン油 210,792 kL 10%
その他車両用 207,093 kL 10%
船舶エンジン油 112,039 kL 5%
機械油 313,946 kL 14%
金属加工油 144,475 kL 7%
電気絶縁油 59,884 kL 3%
その他特定用途向け 449,901 kL 21%
その他 301,844 kL 14%
合計 2,173,357 kL 100%

潤滑油は、機械の血液とまでいわれるほど機械を動かす上で重要な役割を果たしており、近年、地球環境問題がクローズアップされ、潤滑油にもより一層の省エネ効果が期待されている。また、潤滑油は一般に使用後廃油として排出され、回収された廃油から再生重油などが生産され、利用されている。

2021年3月の資源エネルギー庁委託事業報告書「令和2年度燃料安定供給対策に関する調査等事業(潤滑油の安定供給に向けた原料確保の多様化に関する調査・分析事業)調査報告書(公表用)」によれば、2019年度の廃油処理業者回収量は600千kLで、そのうち560千kLが廃油再生工場で処理され、530千kLが再生重油として再利用されたと推定されている。

ページの先頭へ移動します。


2. 潤滑油用基油

潤滑油用基油としては、入手性やコストの面から石油系潤滑油基油が多く使用されている。特に摩擦・摩耗を低減する性能が要求される潤滑油にはパラフィン系基油が広く利用される。このパラフィン系基油は、近年の省燃費性や長寿命化要求によってより高性能化されてきている。米国石油協会(API:American Petroleum Institute)では、表 2-2-1-3に示すように基油を5種類に分類している。グループI~グループIII基油が石油系潤滑油基油で、グループI基油は世界的に最もポピュラーな潤滑油基油である。グループIIやIII基油は、水素化分解プロセスを利用し、硫黄分や基油中の芳香族炭化水素成分を低くした高粘度指数基油である。グループIVはポリ-α-オレフィン(PAO)の合成油であり、グループVはグループI~IVに属さない基油(エステル類等)となっている。なお欧州ではAPIの基油分類に加えて、合成系PIO(poly-internal-olefins)をグループVIに分類しているが、米国ではまだ採用されていない。

更にAPIの基油分類以外のカテゴリーとして、電気絶縁油や冷凍機油など基油自体に低温性能が求められる潤滑油の基油としてナフテン系基油がある。

表 2-2-1-3 APIの基油の分類
分類 硫黄分、mass% 飽和分、mass% 粘度指数
グループ I >0.03 および/または <90 80~119
グループ II ≦0.03 および ≧90 80~119
グループ III ≦0.03 および ≧90 ≧120
グループ IV ポリ-α-オレフィン(PAO)
グループ V グループI~IVに属さないもの(エステル類等)

ページの先頭へ移動します。


3. 潤滑油用添加剤

潤滑油には様々な添加剤が使用される。一般に工業用潤滑油と呼ばれるものの多くは添加剤量が5%以下であるが、エンジン油に代表されるように自動車用潤滑油では5~25%の添加剤が配合される。表 2-2-1-4に潤滑油に使用される代表的な添加剤を示す。特に使用済潤滑油を燃料として燃焼処理する場合、使用油中に含まれる添加剤成分などが大気中に放出され2次汚染を引き起こすことが懸念される。

表 2-2-1-4 潤滑油に使用される代表的な添加剤
添加剤の種類 主な化合物
摩耗防止剤 ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)
極圧剤 リン酸系添加剤、硫化オレフィン、硫化油脂、ポリサルファイド
清浄剤 金属系のスルホネート、フェネート、サリシレート
分散剤 アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル
粘度指数向上剤 ポリメタクリレート、オレフィン共重合体
酸化防止剤 フェノール系(DBPC、DBEP)、アミン系(PAN、アルキル化ジフェニルアミン)、ZnDTP
摩擦調整剤 ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、高級脂肪酸、アミン化合物、エステル化合物
防せい剤・腐食防止剤 カルボン酸、スルホネート、エステル化合物、ベンゾトリアゾール
流動点降下剤 ポリメタクリレート
消泡剤 ポリメチルシロキサン、シリケート、脂肪酸エステル


ページの先頭へ移動します。

ページの終わりですページの先頭へ戻る