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このページは、目次の中の第2編の中の第2章の中の第3節 舶用潤滑油のページです。

  1. 舶用ディーゼルエンジン油
  2. LNGを燃料とする舶用ディーゼルエンジンの潤滑油
  3. その他の舶用潤滑油

1. 舶用ディーゼルエンジン油

2019年まで、舶用燃料には、指定海域で使用される硫黄分0.1%以下の燃料を除き、硫黄分や残査油の多い低質重油を使用してきた。そのような硫黄分の高い燃料では、燃焼生成物によるエンジン各部の汚れやエンジン油の劣化が起こりやすく、舶用ディーゼルエンジン油に要求される性能も一段と厳しくなっている。特に、硫黄の燃焼で生成する硫酸を中和するために、潤滑油には高い塩基価(Base Number。以下、BNと略)が求められた。

しかし、環境対策として舶用エンジンにも排出ガス規制を強化する動きの中で、指定海域を除く殆どの海域での低硫黄燃料(0.5%以下)の使用義務化(IMO2020)が2020年1月1日に発効した。

これにより、一時は、低硫黄燃料に応じた低いBNの潤滑油が適していると考えられた。しかし、BNを担う金属性清浄剤は、酸の中和だけでなく、腐食摩耗抑制や清浄性能維持向上(エンジン内に堆積する炭素分を分散させる)にも寄与することから、BNを幾分高めに見直す検討が進み、現在は総合的にバランスの取れた適切な組成の潤滑油がエンジンメーカーから推奨されている。

舶用ディーゼルエンジンは、低速2サイクルクロスヘッド型と4サイクルトランクピストン型に大別される。

舶用ディーゼルエンジンの潤滑方式は、クランクケースに張り込んだ潤滑油で行うウエットサンプ方式と、独立したタンクによって強制給油するドライサンプ方式に大別される。前者は主に中・小型エンジンに、後者は大型エンジンに採用されている。

舶用ディーゼルエンジン油に要求される性能は、トランクピストン型では酸化安定性はもちろん、優れた清浄分散性、フィルター目詰まり防止性、酸中和性と塩基価持続性、水分離性の良いことが必要である。クロスヘッド型に使用されるシリンダ油には、耐摩耗性、耐荷重性および酸中和性が優れ、油が平均してゆきわたる油膜広がり性などが要求される。

システム油は、クロスヘッド型では、ピストンクラウンの熱変形や焼損につながるピストンクラウン裏側に付着するデポジット生成量の少ないことが要求される。舶用ディーゼルエンジン油の品質については、JIS K 2215:1993(一部をJIS K 2215:2006で追補)で分類されており、その適油選定例を表 2-2-3-1に示す。

表 2-2-3-1 舶用ディーゼルエンジン用潤滑油の適油選定例
機関型式 潤滑方式 対象機関 潤滑箇所 使用燃料 適油 JIS K 2215-1993
(内燃機関用潤滑油分類)
タイプ サイクル
クロス
ヘッド型
2サイクル ドライ
サンプ
方式
大型貨物船、専用船などの主機関 シリンダ C重油 舶用4種4号~5号
システム 舶用2種3号、3種3号
トランク
ピストン型
中型貨物船、専用船、連絡船など大型漁船の主機関 シリンダ C重油 舶用4種4号~5号
A重油 舶用3種4号~5号
4サイクル システム 舶用2種4号~5号
舶用3種4号~5号
ウエット
サンプ
方式
一般漁船、小型貨物船などの主機関および一般船舶の補機関 シリンダ
および
ベアリング
C重油 舶用4種3号~4号
A重油 舶用3種3号~4号

なお、前述の燃料中の硫黄分に対するBNの選択に関しては、舶用エンジンのライセンサー注1)、エンジン製造メーカー、潤滑油メーカーなどがそれぞれに推奨情報を公開している。

エンジンメーカーの推奨情報を総合すると、推奨のおよそのBNは、硫黄分0.1%規制燃料油でBN15~25、硫黄分0.5%規制燃料油でBN40、硫黄分0.5~1.5%程度の燃料でBN40~70、硫黄分1.5%以上でBN70~100程度である。

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2. LNGを燃料とする舶用ディーゼルエンジンの潤滑油

燃料の低硫黄化に加え、排出する二酸化炭素排出の抑制効果から、今後、舶用燃料としてLNGの使用が広まる見込みである。LNGを燃料としたエンジンにおいては、通常のディーゼルエンジンにおける潜熱による冷却効果がないことや、LNGの燃焼性の良さから、エンジンの熱負荷が高く、エンジン内のカーボン状堆積物が増加することが指摘されている。そのため、LNGエンジン向けの潤滑油が求められている。同時に、単に潤滑油性状の最適化だけでなく、注油率の増加や、異なる潤滑油の交互利用など、使用方法の工夫も提案されている。

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3. その他の舶用潤滑油

舶用潤滑油は、まず主機関のエンジン油が最も重要なものであるが、発電機や圧縮機、冷凍機、清浄機などの補機類および船の運航、係船、荷役に必要な甲板部用機械にも各種潤滑油が使用される。表 2-2-3-2 に、船舶用補機に用いる潤滑油の一例を示す。

表 2-2-3-2 船舶補機用潤滑油の一例
対象機器類 油種 適正な粘度(グレード)
主機関シリンダ シリンダ油 SAE50
主機関システム、発電機、過給機、調速機、船尾管装置 ディーゼルエンジン油 SAE30、40
甲板機械、操舵機、可変ピッチプロペラ、サイドスラスター 油圧作動油 VG5~100
空気圧縮機 コンプレッサー油 VG100
冷凍機 冷凍機油 VG32、68
甲板機、遠心分離器等のギヤー部、減速機 ギヤー油 VG100~460
各種機器、操舵機の軸受 グリース NLGI2号
甲板機械等のオープンギヤー、ワイヤーロープ ギヤーコンパウンド  

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[注]
注1)舶用エンジンのほとんどを占める2ストローク機関のライセンサーである、MAN Energy Solutions社、Winterthur Gas & Diesel社、Japan Engine Corporation社の3社。


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