1. グリース潤滑の特徴
グリースとは、潤滑油を増稠(ぞうちょう)剤で固めた半固体状の潤滑剤である。
グリース潤滑は油潤滑と比べて、以下のような利点がある。
- 漏れおよび飛散が少なく、長期間無補給で潤滑可能
- グリースがシールの役割を果たし、潤滑部分のシール構造を簡単に出来る
- 給油困難な箇所や、給油回数の多いところに有利
- 低速・高荷重でも良好な潤滑性
- 長期間、潤滑部分に位置し、さびを防止する
また、グリース潤滑の欠点としては次の点がある。
- 給油、交換の取扱いが困難
- 水、ゴミが混入したとき除去が困難
- 高速回転には向かない
近年ではこれらの特徴(長期間潤滑可能、シール構造が簡単で良い)を生かして、従来、油潤滑していた箇所をグリース潤滑に変更することにより、部品の小型化、メンテナンスフリー化を図る例もある。
2. グリースの組成
グリースは基油、増稠剤、添加剤の三つの要素で構成されている。
基油
グリース中の基油の割合は多く、80~95%程度である。一般グリースには鉱油が用いられ、高温性能、低温性能、長寿命など鉱油では対応できない性能が要求される場合には、合成油が用いられる。
増稠剤
グリース中で基油を保持し、半固体状の性質を与える。増稠剤は、石けん系と非石けん系に大別される。
(1)石けん系増稠剤
最も広く使用されている増稠剤で、リチウム、カルシウムなどの金属脂肪酸塩(石けん)が用いられる。
(2)非石けん系増稠剤
ベントン、シリカゲルやウレア化合物が使用される。これらは耐熱グリースによく用いられる。
添加剤
基油の性能を高めるために使用される。潤滑油とほぼ同じ添加剤(酸化防止剤、極圧添加剤、さび止め剤)等が使われる。グリース特有の添加剤として固体潤滑剤も使用される(油では沈殿するが、グリースは半固体状なので、分散して使用される)。
3. グリースの硬さによる分類
潤滑油の流動性を粘度で表すように、グリースの硬さは稠度で表す。稠度は一種の針入度で、稠度が大きいほどグリースが軟らかいことを示している(表 2-3-3-1)。一般に手塗り・ガン給油には1~3号が用いられ、集中給油には000~0号が用いられる。
- 表 2-3-3-1 稠度番号と稠度の関係
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稠度番号 混和稠度範囲※1 状態 000号 445~475 半流動状 00号 400~430 半流動状 0号 355~385 大変軟らかい 1号 310~340 軟らかい 2号 265~295 中間 3号 220~250 やや硬い 4号 175~205 硬い 5号 130~160 大変硬い 6号 85~115 大変硬い - 注記:
- ※1.規定の混和器で60回混和した直後の稠度
4. グリースの種類とその特徴
グリースの種類は多種多様で、使用している増稠剤、用途及び特性により分類される。
カルシウム石けんグリース
耐水性が良好であるが、使用可能上限温度が低い特性がある。条件の厳しくない箇所の潤滑に使用される。耐水性が良い特徴を利用してシャシーグリース、コンクリートポンプ用グリースに利用されている。
リチウム石けんグリース
耐水性、耐熱性および機械的安定性に優れ、全ての性能に欠点がない特性がある。リチウム石けん系グリースは万能型グリースとして、国内はもとより全世界で最もよく使用されるグリースとなっている。
ウレア系グリース
非石けん系の代表的なグリースである。耐水性、機械的安定性、特に優れた耐熱性を有する。高温条件下で使用される鉄鋼用グリースに主に使用される。基油に合成油を使用したグリースはとくに長寿命であり、家電軸受けや自動車電装品軸受けに使用される。