本牧インサイト

燃料油の化学品転換への取り組み
-エチレンクラッカーボトム油からのBTX製造技術の開発-

省エネ・省燃費技術の進歩や、国内の人口減少等を理由に燃料油需要の減退が著しい一方、パラキシレンなど石油化学品の需要は堅調に増加しており、燃料油の化学品転換の重要性が日に日に増しております。
ナフサを原料としたエチレンクラッカーでは、芳香族分を豊富に含んだエチレンクラッカーボトム油(以後エチレンボトム油)が副生され、一般的にはエチレンクラッカー向けの燃料油として使用されておりますが、当社ではエチレンボトム油をより付加価値の高いBTX(ベンゼン・トルエン・キシレンの略称)に転換するための接触分解技術の開発を進めてまいりました。第49回石油・石油化学討論会にて公表した研究成果は、2019年11月21日の化学工業日報の1面記事にも掲載されました。

図: 2環モデル原料の反応評価結果

エチレンボトム油から高収率でBTXを得るにはエチレンボトム油中に豊富に含まれる2環芳香族を効率的に分解することが重要となります。そこで、ナフタレン類・ナフテノベンゼン類・ナフテン類の3種類のモデル化合物に対して反応評価を行い、化合物の構造と反応性の関係を把握しました。図に示した反応評価から、(1)ナフタレン類は単独ではほとんどBTXへ転換せず、かつコーク生成量が多いこと、(2)ナフタレン類を部分水素化したナフテノベンゼンはBTX収率が高いこと、(3)更に水素化を進めたナフテンはナフテノベンゼンよりもBTX収率が低下しガス・LPG収率が高くなることが分かりました。以上より、エチレンボトム油を部分水素化し、ナフテノベンゼンの比率を高めた油を反応原料とすることがBTX収率を高めるために重要といえます。

エチレンボトム油中の重質な留分をカットした後、ナフタレン類を部分水素化することでナフテノベンゼン類を豊富に含む原料油を得ました。原料油に対し固定床装置を用いて接触分解反応を行ったところ、24時間反応させた際のBTXの平均収率は46%と高い値となり、エチレンボトム油を高効率でBTXに転換可能であることが確認されました。生成液中の重質留分を回収し原料としてリサイクルすることで、TotalのBTX収率は約70%となります。BTX収率は経時的に低下しますが、反応後の触媒を酸素共存下で燃焼再生することにより活性が元通りに回復することからコーク劣化が活性低下の主要因といえます。安定して高いBTX収率を得るため、固定床反応器を2系列化し、片側にて反応をしている間、もう一方の反応器には酸素を含む再生ガスを供給し触媒再生を行うスイング式の反応形式を採用することを想定しております。
当社はこれまでもFCA(Fluid Catalytic Aromaforming:流動接触芳香族製造)プロセスをはじめとした高効率なBTX製造技術を開発してまいりました。本技術はエチレンボトム油に限らず、種々の中間留分にも適用可能であり、製油所・石油化学工場における燃料油の化学品転換に貢献できる技術と考えております。

参考文献

  • 眞弓、梅田、小林、岩佐, 第49回石油・石油化学討論会予稿集 (2019)