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Tribology Internationalに樹脂材料の潤滑に関する論文が掲載

樹脂(プラスチック)材料は、軽量・低騒音性といった利点から、様々な分野で摺動部位への適用が進んでおり、摩耗防止や摩擦低減に適した潤滑油の開発が望まれています。潤滑油は基油と添加剤から構成され、用途や使用環境に合わせて適切な添加剤を選択することが、潤滑油の性能を最大限発揮するための鍵となります。その一方で、従来の研究開発は主に金属材料の潤滑を前提としてきたことから、樹脂材料の潤滑、特に添加剤の効果については十分に解明されておらず、樹脂材料に適した潤滑油を開発する上での課題となっています。
このたび、樹脂材料の潤滑における添加剤の効果に関する研究成果が、国際学会誌「Tribology International」(Elsevier社発行)に掲載されました。
“Effect of organic friction modifiers on lubrication of PEEK-steel contact” (Open access)

本研究では、スーパーエンジニアリング・プラスチックの一つであり、摺動用途として代表的に用いられるPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)と鋼材間の潤滑に着目し、添加剤(有機摩擦調整剤:Organic Friction Modifier)の効果について考察しました。添加剤の推定作用機構と摩擦・摩耗への効果を図1に示します。添加剤の効果は滑り条件に依存し、純滑りでは摩擦・摩耗を改善したのに対し、転がり滑りでは逆に摩擦・摩耗を悪化させました。摩擦表面の分析を通した作用機構の考察から、鋼材表面に形成される樹脂の移着膜(保護膜)との関係において、純滑りでは添加剤が相乗効果で働く一方、転がり滑りでは添加剤が阻害効果を示すことを明らかにし、今後の潤滑油開発における重要な知見を得ることが出来ました。
なお、本研究は、英国サウサンプトン大学(当社辰巳社員が留学中)との共同研究により実施しており、前報(関連論文参考)については、2019年9月に開催された国際会議「International Tribology Conference (ITC) Sendai 2019」において“Best Paper Awards”を受賞しました※1(図2)。

図1 樹脂材料の潤滑における添加剤の効果
図2 左から設楽社員、辰巳社員(ともに潤滑油研究開発部)、共著者のRatoi博士(サウサンプトン大学)
  1. ※1ITC Sendai 2019 “Best Paper Awards”受賞者一覧
    http://www2.convention.co.jp/itc2019/award/index.html

関連論文

  • “Effect of Lubrication on Friction and Wear Properties of PEEK with Steel Counterparts” (Open access)
    Tatsumi, G., Ratoi, M., Shitara, Y., Sakamoto, K., and Mellor, B. G., Tribology Online, 2019, 14, 5, 345–352.
    https://doi.org/10.2474/trol.14.345