本牧インサイト

中性子を使用して軸受内グリースの流動状態の可視化に成功

地球の環境保護、温暖化防止の観点から自動車および産業機器の更なる省エネルギー化が求められ、特に産業用モーターの高効率化が重要な課題になっており、当社はモーターの高効率化のためにモーター軸受に潤滑剤として使用されるグリースの省エネルギー性の向上に取り組んでいます。モーターの軸の回転により発生するグリースの攪拌抵抗はモーターの効率に影響を与え、軸受内グリースの流動状態に大きく依存します。したがって、グリースの攪拌抵抗を低減させる、すなわち省エネルギー性を向上させるには、軸受内グリースの流動状態を制御する必要があり、そのためには軸受内グリースの流動状態を解明する必要があります。
そこで当社は軸受内グリースの流動状態解明の一環として、最先端の高度研究施設J-PARC(大強度陽子加速器研究施設Japan Proton Accelerator Research Complex)のパルス中性子ビームを活用して、非破壊で金属内部の軽元素物質の可視化が可能な中性子イメージングにより、回転試験後の金属製軸受内グリースの流動状態を非破壊で可視化することに成功しました。
省エネルギー性の異なるリチウム系グリースを封入した2種類の金属製軸受について種々の時間で回転試験を行った後、軸受の中性子イメージング測定を行い、軸受内グリースを非破壊で2次元的、3次元的に可視化して、試験後のグリースの分布を調べました。その結果、軸受の軸方向から撮影した2次元像(透過像)から両グリースとも回転時間とともに軸受内グリースの分布が変化し、省エネルギー性により異なった変化をすることがわかりました(図1、明るい部分がグリース)。さらに軸受内グリースの分布を詳細に把握するために、60分回転試験後グリースの3次元像から軸受の軸方向と径方向の断層像を得ました(図2)。その結果、以下の(1)、(2)が明らかになり、グリースの分布(流動状態)の差異がグリースの攪拌抵抗、すなわち省エネルギー性に影響を与えていることがわかりました。

  1. (1)省エネルギー性の高いグリース:転動体へのグリースの付着が少なく、保持器部分にグリースが分布
  2. (2)省エネルギー性の低いグリース:転動体に多くのグリースが付着

今後、回転試験中の軸受についてイメージング測定を行い、軸受内グリースの分布の変化過程を解明し、さらに省エネルギー性の高いグリースの開発に繋げたいと考えています。

なお,本実験はJ-PARCの物質・生命科学実験施設においてエネルギー分析型中性子イメージング装置「RADEN」を使用して行いました(一般利用課題番号:2019B0229)。

図1 軸受内グリースの分布(透過像)
転動体:軸受内の軌道を転がる部品
保持器:転動体同志が接触しないように保つ部品
図2 軸受内グリースの分布(断層像、60分回転試験後)