本牧インサイト

「ケミカルループによるCO2還元」に関する論文がChemical Scienceに掲載(2020年12月)

大気や排ガスから回収したCO2と再エネを使って液体燃料を製造する「再エネ合成燃料技術」では、CO2を反応性の高いCOに還元するステップが重要です。当社では、早稲田大学先進理工学研究科の関根研究室との共同研究で、ケミカルループ法によるCO2還元を研究しています。ケミカルループ法に用いられる酸化還元可能な材料(メディエーター)開発に関する今年度成果としてCu-In2O3を用いると、500℃以下の低温でもケミカルループによりCO2からCOが生成することが見いだされました。そして、これらの成果が昨年12月23日発行の国際学会誌Chemical Science誌(The Royal Society of Chemistry)に、当社社員も連名で掲載されました。
“Fast oxygen ion migration in Cu–In–oxide bulk and its utilization for effective CO2 conversion at lower temperature”(DOI:10.1039/d0sc05340f)

図1 メディエーターを用いたケミカルループによるCO2還元(CO生成)反応の概念図

【ケミカルループ法】繰り返し酸化還元可能なメディエーターをまず水素により還元し、そこへガスを切り替えてCO2を流すと、メディエーターの酸素欠損によりCO2が還元(メディエーターは酸化)されてCOが生じる仕組みです。メディエーターの還元と、還元されたメディエーターによるCO2還元を切り替えて繰り返し行うため、「ケミカルループ」と呼ばれています。通常の触媒反応(逆水性ガスシフト反応)に比べて、原理的に温度に応じた平衡に支配されないため、高い転化率でのCO生成が期待できます。

図2 Cu-In2O3のCO2分解速度(既存材料系との比較)

【メディエーターの開発】ケミカルループの実用性を高めるためには、目的とするCO2還元反応が、より低温で、より高速度で行われることが必要です(図2)。本共同研究で見出されたCu-In2O3は、CuとInの複合酸化物Cu2In2O5の還元処理により、Cuは金属まで、Inは3価まで還元されて得られます。このCu-In2O3は水素気流下でさらに還元されてIn2O3格子内に酸素欠損を生じ、CO2導入により酸素欠損が埋まり COを生じます。この過程で、In2O3内部で酸素イオン(O2-)が低温でも素早く移動することで、他の材料系にはない、高いCO2分解速度を示すことがわかりました。本材料を用いたケミカルループにより逆水性ガスシフト反応が低温化・高速化できれば、より低コストで環境負荷の小さい再エネ合成燃料製造プロセスの実現が期待されます。